在留資格「技術・人文・国際業務(以下、技・人・国と表記)」は、就労ビザの中でも代表的なものの中の一つです。
在留資格申請のご相談を受けた際には、まず、「資格該当性」と「基準適合性」の観点から、在留資格の申請が可能か否かの検討を行います。
「資格該当性」とは、それぞれの在留資格で行うことのできる活動であるか、「基準適合性」とは、基準省令に定められている審査基準に適合しているかといったもので、技・人・国の場合、本人と受け入れ先企業の両面から見ていきます。
技・人・国でよく問題になるのは、本人の経歴と職種のアンマッチ・本来してはならない現場作業等に従事してしまう等です。
今回の事例は、企業が外国人を通訳として招聘したいという事案で、他の事務所に依頼していたが、半年たっても申請に至らないということで当事務所にご相談をいただきました。
お話を伺ってみると、本人の経歴は全く問題がありませんでしたが、招聘先企業の方が、コロナ禍の真っただ中に会社を設立したため、企業活動ができず決算書も2期連続債務超過の状態という事例でした。
安定的に継続して外国人の雇用が維持できるのかという観点から、確かに厳しい事案でしたが、以下のような理由からお引き受けすることにしました。
①企業活動ができなかった理由が、コロナ禍という不可抗力によるものである
②本人の経歴に問題がない
③招聘先企業のビジョンが明確で、今後の計画も明瞭
④取引予定先に問題がなく、関連企業の運営も順調
⑤招聘先企業の代表者の方と、窓口の方が真面目で好印象
特に⑤は大切で、他の事案であっても、当事務所にとってお客様と良い関係が築けるかどうかは、最終的な決め手となっているように思います。
当事務所が行ったサポートは、まずは2年間の事業計画と収支予算書を作成することでした。
取引予定先と契約書の取交しも可能とのことでしたので、契約を締結していただき上記書類にエビデンスとして添付しました。繰債務超過の解消見込についての説明は、補助金の申請業務の経験が活きました。その他、雇用理由書の内容に意を尽くすことは言うまでもありません。
代表者様の経歴や関連会社の説明なども細かく行い、今後の運営に懸念がないことをできる限りアピールし、無事許可を受けることができました。
ここまで行き着くのに、何よりもお客様のご尽力とご協力をいただけたことが大きかったと思っています。この場をお借りし、お客様にはあらためて御礼申し上げます。
このように、在留資格の申請は、単に出入国在留管理局のHPに記載されている書類を提出するだけでは足らず、案件ごとに必要と思われる書類を添付し立証を積み重ねていくことが大切です。一度不許可となったものを覆すのは、時間もかかり、難易度の高い作業となります。不許可となる前に、また、申請の際にはできる限り入管から追加書類を求められないよう、先回りした対応が求められます。