北九州市では、米国関税措置の影響を受ける、または受ける恐れのある市内の中小企業を対象に、「新たな事業展開」を支援する助成金制度を設けています。本記事では、この助成金の目的、対象、そして申請を検討する上で特に重要なポイントや注意点を詳しく解説します。

助成金の目的と概要

本助成金は、米国関税措置の影響により国内外でのビジネス縮小が懸念される現状において、その影響を受ける市内中小企業が行う「新たな事業展開」の費用の一部を助成し、競争力強化を図ることを目的としています。

助成対象事業者

  • 北九州市内に事業所を有する中小企業者であること。
  • 市税の滞納がないこと。
  • 「米国関税措置の影響を受け、直近3か月の売上高が前年同期の売上高と比較して5%以上減少した」、または「直近1か月の売上高とその後の2か月の見込みの売上高が前年同期の売上高と比較して5%以上減少する見込みであること」が条件となります。

本助成金において最も難しく、かつ重要なポイントは、売上高の減少が「米国関税措置の影響」によるものであることを明確かつ論理的に証明することです。

  • 単に売上が減少しただけでは不十分です。例えば、一般的な景気低迷、市場競争の激化、コロナ禍のような他の要因、あるいはテナント都合による店舗閉鎖などが売上減少の主因である場合、助成の対象外となる可能性が極めて高いです。
  • 事業規模の縮小(例:複数店舗から単一店舗への集約)による全体売上の減少であっても、その根本原因が米国関税措置に起因するコスト高騰や採算悪化にあることを具体的に示し、因果関係を立証する必要があります。
  • 現在、事業を継続している主要な店舗や部門の売上が増加している場合は、全体としての売上減少があっても、「米国関税措置の影響で売上が減少している」という要件を満たさないと判断される可能性があります。助成金は、実際に影響を受けて売上が低迷している事業体を支援するためのものです。

助成対象となる「新たな取組」と経費

助成対象となるのは、米国関税措置の影響を乗り越えるための「新たな事業展開」に要する費用です。既存の取組の経費は対象外です。

  • 実施区分:効率化・高収益化、新分野展開・事業再構築などが含まれます。
  • 対象経費の例:店舗改修、設備導入、コンサルティング費用など。
  • 対象外経費:固定費(賃金、維持管理費等)、旅費、消費税相当額、振込手数料などは対象外です。

申請期間とプロセス

  • 募集開始: 令和7年7月15日(火)から。
  • 締切: 助成金の申請が予算額に達し次第、受付が終了します。早期の終了が予想されますので、事前の準備と迅速な申請が重要です。
  • 着手時期: 助成事業への着手は、事業実施計画の認定後からとなります。
  • 事業完了期限: 令和8年3月31日までに事業完了(経費の支払い完了)し、完了後20日以内に実績報告が必要です。

【注意点】予算額と早期終了

本助成金は、予算に限りがあり(2,000万円 20社程度)、申請が殺到すると募集期間内であっても早期に受付が締め切られることがあります。申請を検討される場合は、募集開始と同時に準備を進め、迅速に提出することをお勧めします。

まとめと申請へのアドバイス

北九州市の「米国関税措置に対する新規チャレンジ支援事業助成金」は、特定の条件を満たす中小企業にとって大きなチャンスとなり得ます。しかし、その厳格な「米国関税措置の影響による売上減少」の証明は、多くの事業者にとって難しいハードルとなります。また、申請書の中でサプライチェーンの位置付けなどを図示することが求められるなど、これまでの申請書の内容と異なる点に戸惑いを感じることもあるかも知れません。

申請をご検討の際は、ご自身の事業状況がこの「売上減少の因果関係」の条件に合致するかどうか、事前に十分な確認と、必要であれば専門家へのご相談をお勧めします。適切な準備と戦略的なアプローチが、採択への道を拓きます。

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